〈心不全〉
概要:
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態を指します。
心臓は血液を全身に送り出す役割を担っていますが、心不全になるとその働きが弱まります。
心不全は「病名」ではなく「状態」であり、心臓の機能が低下した状態を指します。
原因となる病気は様々で、代表的なものは以下になります。
・高血圧:長期の血圧上昇で心臓に負担がかかる。
・心筋梗塞:心筋壊死により、心臓ポンプ機能が低下する。
・弁膜症:心臓の弁が正常に機能せず(狭窄または逆流)、血流が悪化する。
・不整脈:心拍の乱れなどが持続し、心機能が低下する。
症状:
心不全の症状は進行度によって異なりますが、主に以下のような症状があります。
・息切れ・呼吸困難
・浮腫
・倦怠感
・動悸・めまい
診断:
1. 問診と身体所見
・息切れや浮腫の有無
・心音や肺音に異常所見がないか
・血圧、心拍数、酸素飽和度などを測定
2. 血液検査
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の数値が高いと心不全の疑いがあると判断されます。
3. 心電図
心臓の電気的な活動を記録する検査です。不整脈や心筋梗塞の有無を確認します。
4. 心エコー
超音波で心臓の動きや形態を観察します。心筋収縮力や弁膜異常(狭窄または逆流)を評価し
ます。
5. 胸部X線
心臓や肺の状態を確認します。心不全では心臓が大きくなったり、肺に水がたまる所見(肺うっ血)を呈することがあります。
治療:
1. 薬物療法
・利尿薬:体内の余分な水分を排出し、浮腫や息切れを軽減する
・β遮断薬:心拍数を抑え、心臓への負担を軽減する
・ACE阻害薬・ARB:血管を拡張し、血圧を下げることで心臓の負担を減らす
・MR拮抗薬:ナトリウムと水分の排出を促し、心不全の進行を抑制する
2. カテーテル治療・手術
<冠動脈疾患が原因の場合>
・経皮的冠動脈形成術(PCI):狭くなった血管をバルーンカテーテルで拡張する治療
・外科的冠動脈バイパス術(CABG):狭窄部分を迂回するバイパスを作成する外科手術
<弁膜症が原因の場合>
・弁置換術:損傷・劣化した弁を人工弁と交換する治療
・TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術):カテーテルを使って人工弁を留置する低侵襲治療
<重症心不全の場合>
・心臓再同期療法(CRT):ペースメーカーを使い、左右心室を同期収縮させる治療
・植込み型除細動器(ICD):突然死予防のため、不整脈時に電気ショックを与える機器
3. 生活習慣の改善
・塩分制限:塩分は体内に水分を貯めやすくするため、1日摂取塩分を6g以下にする
・適度な運動:無理のない範囲でウォーキングや体操などの有酸素運動を行う
・体重管理:毎日体重を測定し、急激な体重増加(2~3kg以上)に注意する
心不全は進行すると命に関わる可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。軽い症状でも放置せず、定期的に医療機関を受診しましょう。治療は薬物療法と生活習慣の改善が基本ですが、重症の場合は侵襲的治療(カテーテル治療や外科手術)が選択されます。